Quintessence of Dental Technology
Vo.17/1992 March page 313 ~ 330
Willi Geller 学術講演会
ー oral design (全身的審美)の調和を考える ー
Special Lecture for Porcerain billding Technique by Willi Geller
特別再録
Willi Geller 学術講演会
oral design(全身的審美歯科)の調和を考える
Willi Gellerによる臼歯部ポーセレン築盛テクニック
Will Geller
ディスカッション
シェード・テイキングと色調の伝達およびその再現法
Willi Geller
歯科技工士
山本 眞
M.YAMAMOTO
CERAMIST'S INC. 代表
青嶋 仁
昭和大学歯科医院
中央技工室室長
本稿 は 、 昨年 11 月 17 日 に 神戸 市 で 行なわ れ た 第 4 回 大阪 セラミック ・ トレーニング センター 学術 講演会 ( ( 株 ) ハーマンズ 共催 ) で の 、Willi Geller 氏 の 講演 、および 山本 眞 ・青嶋 仁両氏 と の ディスカッションを再録した もの で ある 。
Willi Geller 氏 は 、 スイス の 著明 な セラミスト として 世界 を 駆け 巡っ て いる 。 長年 の 臨床 経験 により 、一 歯科 技工 士 を 越え て 、 Oral Design ( 全身 的 審美 の 調和 ) という コンセプト に 基づき ポーセレン 修復 物の 製作 を 手がけ ている。
当日 の 講演 で は 、 Oral Design に 基づい た 上顎 の フル マウスリコンストラクション の 症例 に ついて 、 スタディ モデル の 印象 や プロビジョナル ・ レストレーション の 作製 、 印象 、 模型 作製 から 始まり 、ワックス ・ アップ 、 フレーム ワーク の 作製 、 クリエーション を 用い た ポーセレン 築盛 の 詳細 、 後ろう に 至る まで すべて の プロセス が 、 微 に 入り、細 に 亘っ て 紹介 さ れ た 。
前歯 部 の ポーセレン 築盛 テクニック について は 、 ドイツ の Verlag Neuer Merkur 社 において 共著 の書籍 が 出版 さ れ て いる ので ( 弊社 にて 翻訳 刊行 の 予定 ) 本稿 で は 、 臼歯 部 の ポーセレン 築盛 テクニック の 概要 を 掲載 する 。
また 講演 会 後半 において は 、 日本 の 代表 的 トップ セラミスト 山本 眞・青嶋 仁 両氏 と の ディスカッション が 、 片岡 繁夫 氏 を 進行役 に行なわ れ た 。
この ディスカッション で は 、 2 つ の 症例 に対する 3 人 の 演者 の シェード テイキング と 、 それぞれの 異なっ た 材料 ・ テクニック を 用い た 色調 再現 法 が 発表 さ れ た 。 また ドクター と ラボサイド の 色調 の伝達 方法 が あわせ て 紹介 さ れ た 。
WIlli Gellerによる臼歯部ポーセレン築盛テクニック
図1 プレパレーション。上顎臼歯部には、インプラントが埋め込まれている。上下顎前歯部は既にブリッジワークの製作が終了している。
Will Geller
図2 印象された状態。
図3 咬合器にマウントされた状態。
図4 上顎臼歯部の作業模型。歯間乳頭や粘膜面の形状を残したまま、支台は部分のみ可撤できる。歯肉の情報は重要である。同じ印象から石膏模型を3〜4個作製し、マスターモデル、適合確認用、チェック用として用いる。
図5 ワックス・アップ。下顎は上顎の製作のためにワックス・アップが全て保存される。
図6a オーロフィルムが焼き付けられたフレームワーク。
図6b オーロフィルムが焼き付けられたフレームワーク。
図7 オペーク・ポーセレンとポーセレンショルダーの焼成が終了した状態。
図8 オペーシャス・デンティンの使用法。
図9a, b オペーシャス・デンティンを粘膜面部と歯頚部に築盛し、さらに象牙色ポーセレンを築成したところ。咬頭部にはより明度の低い象牙色ポーセレンを築盛している。
図10 エナメル色ポーセレンの築盛。
図11 エナメル色ポーセレンの築盛し、溝、窩を形成した跡、強い色のステイン(メイクアップ)を施す。
図12 メイクアップポーセレン。
図13 図11で施したステインをネックトランスルーセントで覆う。
図14 ネックトランスルーセント。
図15 再びエナメル色ポーセレンの築盛する。
図16 図15の頬側面観。
図17 イリュージョンを塗布し、ブルーがかったエナメル質の色調を再現する。
図18 メタルとの移行部に薄くおぺーシャス・デンティンを築盛する。
図19 再びエナメル色ポーセレンの築盛する。
図20a 頬側面への築盛。より透明度の高いエナメル色ポーセレンを使用する。
図20b 頬側面への築盛。より透明度の高いエナメル色ポーセレンを使用する。
図21 ポンティック下部、およびマージン部へのオペーシャス・デンティンの追加。
図22 咬頭部にエナメル色と象牙質ポーセレンを50%ずつ混合したものを築盛する。
図23 隣接面部に切り込みを入れ、焼成する。
図24a 完成。口腔内装着状態の頬側面観。
図24b 完成。口腔内装着状態の咬合面観。
ディスカッション
シェード・テイキングと
色調の伝達およびその再現法
Willi Geller
歯科技工士
山本 眞
M.YAMAMOTO
CERAMIST'S INC.
青嶋 仁
昭和大学歯科医院
中央技工室室長
片岡繁夫
大阪セラミック
トレーニングセンター
片岡 今日の座談会のテーマは、まずひとつは、歯科医師と歯科技工士のコミュニケーションの方法についてお願いしたいと思います。 製作する補綴物の色調を、 歯科医師がどのような方法でわれわれ歯科技工士に伝達するか、 また、 その伝達された情報に対する歯科技工士の捉え方が、 たとえば今回の3人の先生方でもいろいろとちがうと思いますので、 その捉え方を重点的にそれぞれの先生方にお聞きしたいと思います。
またもうひとつは、症例のスライドを用意してありますので、 実際にスライドをご覧いただき、どういうふうにシェード・テイキングをし、またどういうふうにそれを再現されるかをお聞きしたいと思います。 とくに先生方は、 三者三様に異なったポーセレンを使われておりますので、その再現法や、 使用されるポーセレンの色調選択は、たいへん興味深いと思います。
始めに青嶋先生から、そのような歯科医師と歯科技工士との間の色調の伝え方とか、先生自身の色調の捉え方、もしくはポーセレンの色調選択や築盛法などの注意点がございましたらお願いいたします。
青嶋 まずシェード・テイキングですけれども、方法論としては、つくり手が必ず患者さんを見るのがベストだと思います。 幸い私は現在大学病院にいますので、 自分の手がけるポーセレンワークは、 すべて患者さんを見ることができますので、まず自分の目で患者さんを見ます。そしてもちろんシェードというのは見ただけではだめで、 またいくらスケッチしても、記憶というのは一晩寝て起きればだいぶ薄れますので、 何らかの確実な記録方法が必要となってきます。そのために現時点で一番優れているのは、まず写真を撮ってしまう、 要するにスライドにしてしまうことだと思います。
ですから私は、必ず患者さんの口腔内をスライドに撮り込んでしまいます。 しかも一番自分が近いと思うシェードガイドを一緒に添えて、その状態で写真を撮ります。 これは一番近いもの、それから明度がもう少し高いもの、 あるいは明度の低いもの、3種類ぐらいを並べて撮ると 理想 的 だ と 思い ます 。 まず 自分 で シェード ・テイキング を する という こと です 。 その とき 写真 は 必ず 切端 と 切端 、 要するに シェード ガイドの 切端 と それ から 天然 歯 の 切端 を 突き合わせて 、 なるべく 近い 位置 で 、 同一 レベル で 撮る こと が 必要 だ と 思い ます 。
青嶋 それから 患者 さん の 全体 の イメージ を 見 て いき ます 。 もちろん 患者 さん に これから つくる 歯の 話 も 簡単 に し ます 。 これ は どういう 歯 を つくるか という よう な こと だけ で は なく て 、 患者 さん の 雰囲気 を 自分 に 記憶 さ せる ため に も 必要 です 。 これ は 顔 を 記憶 する 、 あるいは どの ぐらいの 年齢 だっ た か とか 、 どういう 感じ の 女性 だったか とか 、 そういう こと を 記憶 する わけ です 。できれ ば 顔 の 写真 も 撮れれ ば いい の です けれども 、 顔 の 写真 は 嫌がら れる こと が 多い ので 、 顔の 写真 は すべて は 撮り ませ ん が 、 まず 口腔 内 を撮っ て 、 そして 患者 さん の 顔 形 、 性別 を 記録 して おき ます 。
それから 内部 構造 に関して は もちろん 簡単 なスケッチ も し て おき ます 。それから 写真 を 撮る とき の 注意 点 ですけれど 、 もちろん 正面 から 1 枚 は 確実 に 撮り ますけれ ども 、 できれ ば 横 方向 から も 撮り ます 。 どうしても 口腔 内 です と ストロボ 以外 の ライティング など 写真 設備 が でき ませ ん から 、 中 の 構造 を見る ため に 、 横 から も 1 枚 、 それ から できれ ば角度 を 変え て 、 上 の 方向 、 下 の 方向 とか も 撮って おけ ば 、 表面 性状 も 見る こと が でき ます し 、内部 も のぞき 見る こと が でき ます から 、 写真 の撮り 方 も わりあい 注意 する こと が 必要 だ と 思います 。
ほか に 気 を つけ なけれ ば なら ない の は 、 患者さん の シェード の 口腔 内 の 状態 です 。 歯 は 乾燥し て くる と エナメル 質 が 透明 感 を 失っ て いっ てどんどん 白っぽく なっ て いき ます 。 それから 白くなる と 表面 性状 の 雰囲気 も 、 見 た 感じ が 変わっ て き ます 。 われわれ が つくる 目標 というのは 、 患者 さん の 日常 生活 に 合わせ た もの を つくること です 。 要するに 日常 生活 という の は 口 の中 が 濡れ てる 状態 です から 、 患者 さん が 来 たら 、まず 最初 に シェード ・ テイキング を さ せ て もらうという こと です 。 これ が 治療 を し て 、 たとえば 印象 を 採っ た 後 とか 、 いろいろ 口 の 中 を いじった 後 で は 、 もう 口腔 内 が 正常 な 日常 状態 とは ちがっ て い ます から 、 そういう 状態 で 写真 に撮っ たり 、 シェード ・ テイキング を し て も 、 それ は もう 間違い だ と 思い ます 。 歯 の 色 を マッチさ せる という の は 非常 に 難しい と 思い ます 。 ですから 、 なるべく 誤差 の ない ところ に 目標 を 設定 し なけれ ば いけ ない と 思い ます 。 以上 です 。
片岡 どうも ありがとう ござい ます 。 では 山本先生 、 同じ よう な 質問 で いかが でしょ う か 。
山本 スライド の 撮影 とか 撮影 条件 みたい な もの は 、 青嶋 先生 が おっしゃら れ た とおり で 、 私から 何 も 申し上げる こと は ない の です が 、 ただ私 は 青嶋 先生 と は 仕事 の 条件 が まったく ちがいます 。 私 は ラボ を 経営 し て い ます ので 、 いちいち 歯科 医院 へ 出向い て 患者 を 見る という こと ができ ない の です 。 つまり 、 すべて の ケース を 歯科 医院 に 出向い て シェード ・ テイキング を 行なっ て いる と 、 現状 で は 経営 的 に 成り立た ないの です 。 ですから 臨床 ケース の 中 の 半分 ぐらいは 、 たとえば A とか A という 指示 と 歯科 医師 の スケッチ し た 部分 的 に 色 が ちがう といった 指示 で 製作 し て い ます 。 あと は 歯科 医師 が スライド を 撮っ て 送っ て くる という パターン が 多い です 。
もちろん 自分 で シェード テイキング を し 、自分 で 写真 を 撮り 、 そして みずから つくる と いう パターン が 本当は 理想 的 な の だ と 思い ます け れ ども 、 私 にとって その よう な 場合 は ごく 限られ た ケース です 。 したがって 通常 は 、 ほとんど歯科 医師 が 自分 で シェード テイキング し 、 歯 科 医師 が それ に 一番 近い と 思う シェード ガイドを 添え て 写真 を 撮る わけ です 。 当然 、 そういう写真 撮影 について も 、 ある程度 歯科 医師 と 歯科技工 士 と の コミュニケーション が 必要 です ので 、 写真 を 撮っ て いただく 前 に 必ず 守っ て もらうこと は 、 先ほど 青嶋 先生 が おっしゃっ た ように 、 まず 来院 し て 口 を あけ た とき に 撮っ て く ださい という 点 が 1 つ です 。
それから シェード ガイド は もちろん 添える の です けれども 、 全体 的 な 色 の 調和 を 見る に は 大 きい 画面 の ほう が いい です から 、 まず 大体 2 / 3 ぐらい の 撮影 倍率 で 撮っ て もらい ます 。 そう す る と 、 シェード の 全体 的 な 感じ が よく わかる の です 。 そして あと ディテール は もちろん 等 倍 で 撮っ て もらっ て 、 それ も 正面 から と 側 方 から の 両方 必ず 撮っ て もらう よう に し て い ます 。
ラボ サイド で は 、 その スライド を 見 て 歯科 医師 が 選ん だ シェード の 中 で 一番 近い シェード を 選ぶ の です が 、 その 場合 、 色 の 見え 方 という ところ に 一番 気 を 使い ます 。
どういう こと か と いい ます と 、 たとえば 歯科 医師 が B2 とか B 』 とかいう シェード ガイド を 添 え て いる 場合 は 、 これ は ほとんど 無視 し ます。 その よう な 場合 、 実際 に B 系統 で 焼く と 、 ほと んど 口腔 内 で は 合わ ない から です 。 本来 は A 系 統 で あっ たり 、 A 系統 と B 系統 の 間 だっ たり し ます 。 肉眼 的 に 、 たとえば A2 と ピッタリ の シェード ガイド が 添え られ て いる という 感じ に 見え た として も 、 それ は 実際 に A で 焼い たら まず 合わ ない です ね 。 A2 に ピッタリ 見え た と し て 、 大体 ほとんど A2 に かなり ピンク を 加え て 、 しかも 明るく し た よう な 色 です ね 。 それと 明度 は 必ず 写真 に 映っ て いる シェード ガイド よ りも 高め に し ます 。 必ず と いっ て いい ほど 暗く なり ます 。 ですから その 点 は よく 気 を つけ ます 。
私 の システム は 、 この よう に 歯科 医師 の シェード ・ テイキング し た スライド を 見 て シェード を 決め 、 ポーセレン を 築盛 、 形態 修整 を し 、 ある程度 の 表面 ステイン や キャラクタ ラ イズ も 行ない ます 。 それ を 完全 に グレーズ しな いで 、 大体 820-830 ℃ の 温度 で 焼成 し て ステイ ン を 固定 し 、 そして それ を 歯科 医院 で 試適 し て もらう わけ です 。 そして 口腔 内 で バイト 、 コン タクト 、 カントゥア など の チェック を すべて 済 ませ た あと 、 表面 に グリセリン を 薄く 塗っ て も らい ます 。 その 状態 で もう 1 度 、 シェード ガイ ド を 添え て 写真 を 撮っ て もらい ます 。 そして そ の 写真 と 一緒 に 、 試適 後 の クラウン を ラボ に 送 り 返し て もらい 、 そして 私 は その スライド を 見ながら 、 不備 な 点 が あれ ば 、 もう 1 回 そこで 修正 を 行ない ます 。 それで 完成 という こと に なります 。
そこ まで スムーズ に いけ ば 、 大体 うまく いくの です が 、 実際 に は 一 発 で ぴったり 合う ということ は 半分 あるか ない か です 。 ほとんど 修正 が必要 です 。 そして まずかっ たら 、 試適 で 送っ たクラウン は シェード ガイド として 使っ て もう 一個 つくる という こと も よく あり ます 。 ただし 、これ は 中切 歯 1 本 とか 側 切歯 1 本 など の すごく難しい 場合 を 言っ て いる ので 、 そういう 場合 はたぶん 確率 5 割 は ない という こと です 。 この ような ケース で は 、 本当に 写真 的 に も 肉眼 的 に もぴったり 合っ た という レベル に もっ て いく までに は 、 結局 2 回 か 下手 を し たら 3 回 ぐらい か かる と 思い ます 。
片岡 ありがとう ござい ます 。 いま 2 人 の 先生の お話 の なか で 、 明度 という ことば が でてきまし た が 、 この 明度 が 非常 に 大切 だ な という ことを 私 も 感じ ます 。 要するに 色相 を 合わせる よりも 、 明度 を 合わせる こと が 大切 で は ない か と 思う の です 。 実際 に 口腔 内 に 入れ た 時点 で 、 明度が 合っ て いる か 合っ て い ない か で 、 非常 に 見 かけが 左右 さ れる よう です 。
その 明度 の とり方 、 また 実際 に 現時点 で は 明度 を とる シェード ガイド が あるか ない か を Gel ler 先生 に お 聞き し たい と 思い ます 。 私 が 知る 限り で は 、 明度 自身 を とる シェード ガイド は ない よう な 気 が し ます ので 、 Geller 先 生 いかが でしょ う か 。
GELLER 片岡 さん 、 ご 質問 どうも ありがと うござい ます 。 また 山本 先生 、 青嶋 先生 、 ご 説 明 どうも ありがとう ござい まし た 。 今 、 ご 質問 に あり まし た 明度 です が 、 やはり 難しい と 思い ます 。 彩度 より も 明度 の ほう が 難 しい という の が 私 の 意見 です 。 明度 は 透明 感 の ある 層 に 依存 し て いる 、 すなわち その 積層 さ れ た 状態 が どう なっ て いる か という こと で 決ま り 、 それ によって 明度 が 自動的 に 決まる の だ と 考え ます 。 したがって 色相 、 彩度 を まず 見 ます 。 まず 第 1 に 色相 、 彩 度 に 目 を 当て 、 そして メモをとります。 たとえばディープインというふうに書いた場合には、これは明度が低いという意味です。
症例1
GELLER. あるいは異常に明度が高い場合には、高くする必要があるということになります。当然ながらまずその色を見たときに何色の印象が強いかということを見る必要がありますが、 ボトルに入っているポーセレンパウダーの色が、 焼成すると どんな色になるのかということを 把握 しておく必要 もあります。 またボーセレン・パウダーにどういうものがあるかということ、どういうメーカーのものかも考えます。何かの材料を使う場合には、その経験が前になければいけないということになります。どういうものを使うのであれ、1 つのメーカーの 1 種類 だけを使うべきだと思います。 それを非常にうまく使いこなしてほしいのです。たとえば 明度 が 高すぎるものも 低すぎるものもあるでしょうし、いろいろな 性格が ありますから、それを まず つかむことが 大事です。まずそういう 理解をして、 そうすれば たやすくハンドリングができると思います。
さて 話 を 戻します。 明度 との 関係ですが、 たとえば A2 はディープだと思います。 クリエーションの A2 の象牙色ボーセレンは明度が高いですから A2 の 象牙色 ボーセレン を使い、その上に 透明 ポーセレンを 積層 するという形の 使い方 が考えられると思います。 ポーセレン・ルームが 少ない 場合 にはそういう使い方 を します。逆に 低い 明度 の オペークを使って、 A2 の 象牙色 ボーセレンを使うということもあります。また 明度 が 高い 場合ですが、 先ほど示唆しましたように、 まず 第 1 層 に オペーシャス デンティン を 使う ことになります。 そして 十分 な 明度 の オペーシャス デンティン がない 場合 には、 白を 混合 して 明度 の 高い オペーシャス デンティン を 作ります。 そして それによって 明度 を 高める という 使い方 をするわけです。 とにかく 必要な だけ明度 を 上げていくわけです。
片岡 ありがとうございました。先生方 の 明度 に 対する 考えを お聞きしましたが、 結局 答えとして、確実 に 明度 を とるという 方法は、これといったものは まだ 見当たって ないのでは ないかと 私 は 判断したのですけれどではこの辺で、 口 腔 内 の 写真 を 1 枚 用意 していますので、その写真を見ながら、 各先生に実際にどういうふうに色調を捉えていくか、 また捉えた色調に対して、どういうふうに それぞれ の 先生方 が 使っていらっしゃる ポーセレン・パウダー で 色調 表現 を していくかということを お聞き したいと 思います。症例 1 の写真 の 患者は、 条件 としては 30 歳 前、若者 といっていい 女性 ということで 一応 定義 しています。 この どちらかの 中切歯の 色調を シェードテイキング していただきます。 これに対して どういう 色調 表現 で、 どういう 技法 を 用いて 行なって いくのかを お聞きしたいと 思います。
青嶋 これは 私の 目で見て、一番 明度 も 合っていて、 色調 が 近いのは A2 だと思います。 けれども、私はこういう場合には、 ほとんどA1のオペーク・ポーセレン、 それからA1の象牙色、エナメル色ポーセレンを使います。 ただしマージン・ポーセレンでは、この歯頭部の色がA1の歯頸部よりずっと彩度が高いし、 明度もちょっと低いです。 私にはやはりA1 よりずっと赤っぽく、いわゆるピンクっぽく見えます。こういう場合、 私はノリタケ AAAというポーセレンを使っていますけれども、まずA2のマージン・ポーセレンが適応だと思います。 というの は 、 ノリタケ の A2 の マージン ・ ポーセレンは かなり ピンク っぽい から です 。
図1 症例1におけるあおしましのオペーク、およびマージン・ポーセレンの築盛。歯冠の1/3〜1/2くらいまで薄く延長させる。
図2 同青嶋氏の築盛。象牙色、エナメル色ポーセレンの切端ぶに透明ポーセレンを延長させて築盛しておく。
青嶋 まず オペーク ポーセレン は A 」 の オペークを 使い 、 そして 金属 色 を 完全 に 遮断 する こと をまず 考え ます 。 どこ か の 部分 を わざと 金属 色 を透過 さ せ て 、 透明 感 を 得る という よう な 方法 はまったく とり ませ ん 。 第 1 に 、 下地 の 金属 の 色を 遮断 する こと を 考え 、 そして A2 の マージン ・ ポーセレン を 築盛 し ます 。 そして この 場合 は 、マージン ・ ポーセレン を 少し 、 歯冠 中央 部 まで薄く 伸ばし て き た ほう が いい と 思い ます 。 というのは 、 マージン ・ ポーセレン は かなり オペーシャス デン ティン 風 です から 、 ピンク っぽい 色 を 少し 延長 し て くる こと が でき ます 。 そしてその後 に 、 A 1 の 象牙 色 と エナメル 色 ポーセレン を まず 築盛 し ます 。
この 歯 は 、 切端 部 近 心 寄り が ちょっと 透明 感が 強い です ね 。 そして 切端 中央 部 に 少し オレンジ 色 が 感じ られ ます 。 通常 象牙 色 と エナメル 色ポーセレン を 築盛 し 、 築盛 段階 で 大体 反対 側 の 歯 と 同じ ぐらい の 長 さ に 盛 し ます が 、 当然 、焼成 収縮 によって ちょっと 丈 が 短く なり ます 。しかし この 歯 の よう に 、 切端 まで オレンジ 色 が かっ て いる とき は 、 象牙 色 と エナメル 色 ボーセ レン の 先 に 透明 ポーセレン を ちょっと 長め に 築 盛 し て おい て 、 焼成 収縮 が 終わっ て ほぼ 反対 側 と 同じ ぐらい の 長 さ に なる よう な 形 に し ます 。 そして その 上 に 透明 ポーセレン を 築 し ますので 、 目標 は A 」 ですが この 一 次 焼成 の 段階 で は おそらく A 」 より も 明るく 上がっ て いる と 思 い ます 。 そこ に インター ナル ステイン を 塗布 し て いく わけ です 。
図3 同青嶋氏の築盛。内部ステインの状態。
図4 同青嶋氏の築盛。最終築盛状態。
青嶋 まず この 場合 は 、 白 帯 ( 図3A ) が 2 本 感じ ら れ ます 。 この 白 帯 は 明るい 象牙 色 ボーセレン を 用い 、 白 帯 と 白 帯 の 間 を サービカル 色 で 濃く し て いく という 感じ で 表現 し ます 。 ですから 、 あ ら かじめ 明るい 、 明度 の 高い ポーセレン を 使っ て おい て 、 内部 ステイン を し ながら 明度 を 下げ て いく 。 そして 彩 度 も 高め て いく 、 要するに 色 を 濃く し て いく という 形 を とり ます 。 もちろん 淡い 白 帯 は やはり 内部 ステイン で 描く こともあ り ます けれども 、 これ も ホワイト に プライト と いう 無色 透明 の 、 つや を 与える ため の ステイン が あり ます から 、 それ を 多め に 混ぜ て 塗布 し て いき ます 。
切端 部分 に は 、 かなり オレンジ っぽい 色があ り ます から 、 サービカル 2 を 淡く 塗布 し て おき ます 。 また 切端 隅 角 部 に は 、 インサイザルブ ルー という 色 が あり ます から 、 それに 先ほど いっ た 無色 透明 の プライト を 混ぜ て 、 内部 の 隅 角 部分 に ステイン を 淡く 塗布 し て おき 、 それ を その 上 に 築盛 する 透明 ポーセレン に リフレク ション さ せる 感じ で 塗布 し て おき ます 。 そして その後 に 、 透明 ポーセレン を 全体 に 築盛 し ます 。 マメロン の 谷間 の 部分 と 近 遠心 隣接 面 に は 一番 透明 度 の 強い T。 という 透明 ポーセレン を 築盛し て 、 あと は 一般 的 な T 」 で する と 思い ます 。 あと ハロー 効果 を 表現 する ため に 、 切端 およ び 切端 隅 角 部 最先端 部 に は 最終 的 に 象牙 色 と エ ナメル 色 ボーセレン を 1 対 1 に 混ぜ た もの に 、 マ メロン オレンジ の 1 という ちょっと 黄色 味 が かっ た オレンジ 色 の ステイン を 少量 混ぜ た もの を 築盛 する こと に なる でしょ う 。 それから 淡 い モヤモヤ の 白斑 が 見え ます 。 これ は 、 状況 に よって ちがい ます が 、 反対 側 の 歯 を 見 て も おそ らく 表現 する 必要 は ない の で は ない か という 感 じがし ます 。
片岡 ありがとう ござい ます 。 では 山本 先生 お 願い し ます 。
山本 私 は いつも こういう 状態 で 仕事 を もらう ので 、 こういう パターン に 慣れ て い まし て 、 や りやすい です ね 。 そして 外側 の 隣接 面 は 、 これ ぐらい の 白 さ で すと 、 オパール オ クルー ザル と ホワイト E を 2 : 1 で 混ぜ た ぐらい の 白 さ です 。 まず この スライド を 見 て 感じる の は 、 明度 が かなり 高い こと です ね 。 全体 として 彩度 は Az が 最も 近い よう です が 、 明度 において は A 」 で さえ 少し グレー っぽい 感じ が する ほど 高い こと です 。 私 は 松風 ヴィンテージ の ポーセレンシ ステム を 使用 し て い ます ので 、 これ を 使っ た 場 合 の ポーセレン の 色調 選択 を し たい と 思いま す 。
私 の 場合 は 、 A , と まで は いき ませ ん が 、 ま ず オペーク ポーセレン は A20 に バリュー ・ プラス オペーク ( VOP ) を 25 % 程度 混ぜ た もの を 使う でしょ う 。 歯 頸部 の 色 は たぶん 彩度 的 に は A2 です 。 しかし これ を もっ て いく と まっ たく 暗い です 。 したがって ポーセレン ・ ショル ダー の 部分 は たぶん AM を ベース に ごくわず か A , O を 混ぜ た もの ( 10 % 程度 ) を 使う でしょ う 。 ヴィンテージ の マージン ・ ポーセレン は 、 透明 度 が 高く 少し 明度 が 低い から です 。 そして その マージン ・ ポーセレン の 上 に 、 かなり ピン ク が かっ た ファンデーション ・ ステイン を する と 思い ます 。
図5 症例1における山本氏のオペーク、およびマージン・ポーセレンの築盛。
図6a 同 山本氏の築盛。
図6b 同 山本氏の築盛。
それで 象牙 色 ボーセレン は 、 A2B に バ リュー ・ プラス ( VA ) を たぶん 多め に 、 25 % ぐ らい は 入れる と 思い ます 。 そして カット バック し ます 。 カット バック は ごく 普通 で 問題 ない と 思い ます 。 そして 、 オパール 効果 による 青 味 が 見え ます から 、 カットバック し た 上 に 、 隣接 部 と 、そしてマメロン の 谷間 、そして少し切端 を 延長 する 形 で 、 スーパー ルーセント と オバール T を 半分 ずつ 混ぜ た もの を 使い ます 。それで 切端 部 の オレンジ 色 は 逆 オパール 効果 ですから 何 も せ ず に 、 オパール ポーセレン で そのまま 出る と 思い ます が 、 中央 部 の あたり は ちょっと 出 ない です 。
ですから この 部分 に はオパール アンバーを 、 オパール 58 に 約 1/3 ほど 混ぜ た ぐらい の もの を 使う でしょ う 。
エナメル 色 ボーセレン は 象牙 色 ボーセレン の 直上 に は 、 先ほど の スーパー ルーセント と オ パール T を 混ぜ た もの を 使い ます が 、 表面 に はオパール 57 を 使う と 思い ます 。 そして 切端 部 の 白帯 は 、 口腔 内 に 試適 し た とき に 必要 で あれ ば 表面 に ステイン を する と 思い ます 。 そして 歯 頸部 の 縞 模様 は 、 先ほど 青嶋 先生 も 言わ れ た ように 、 この 程度 で あれ ば 白い ステイン で は なく 、横走 隆 線 の 谷間 の 部分 に ピンク オレンジ の ステイン を する と 思い ます 。
片岡 ありがとう ござい ます 。 では Geller 先 生 お願い し ます 。
GELLER この よう な 歯 に 直面 し た とき に 、2 つ の シナリオ が 考え られ ます 。 目標 達成 まで に は 2 つ の 経路 が ある という こと です 。1 つ は まず この 明度 の 低い 、 暗い ところ から 始める 方 法 と 、 もう 1 つ は 白い ところ 、 白 帯 から 始め て 暗い 色 は 後で という 両方 の やり方 が あり ます 。 私 は どちら が 好き か と いい ます と 、 A 3 からや るでしょ う ね 。 歯題 部 は 、 オペーシャス · デン ティン の 43 番 ぐらい を 使っ て 、 できるだけ 明度 が 落ち ない よう に し ます 。 というのも 、 クリエー ション を 使っ て いる 場合 に 、 口腔 内 で 明度 が 落 ちる こと が ある から です 。 それで 明るい 色 の 歯 牙 の 場合 、 たいへん に 難しい の です 。
歯題 部 に まず オペーシャス · デンティン 43 を 薄く 塗り ます 。 これ は 明度 が 落ち ない よう に で す 。 象牙 色 ポーセレン は A3 を 使い ます 。 ちょ うど 歯 頭部 の ところ が 少し ビンク が かっ て おり ます ね 。 しかし これ は もしか する と 、 組織 の 色 が 歯 頭部 に 反射 し て いる という こと が 考え られ ます 。 ですから クリエーション の ショルダー パウダー の 25 を 使い ます 。 ただ あまり ビンク が 強 すぎる と 口 の 中 で 普通 グレー に 見え て しまい ます ので 注意 が 必要 です 。A 3 の 象牙 色 ポーセ レン を 築盛 し た 後 、 白 帯 部 を カービング し て 、 その 堀り 取っ た ところ に A 1 の 象牙 色 ボーセレン を 少し 乗せ ます 。 それで 少し 明るく なり ます 。要するに あまり A 3 の 色調 が 目立ち すぎ ない よ うに という こと です 。
つぎ に は 切縁 の 先端 に エナメル 色 ポーセレン を 盛り 足し た 後 、 非常 に 明るい メイク · イン を 唇 面 に 薄く 築盛 し ます 。 その後 、 切端 部 に 黄色 っ ぼい 着色 を し ます 。 イエロー ピンク です 。 あま り ピンク に なり 過ぎ ない よう に 気 を つけ ます 。 この 場合 あまり ピンク を 多用 し ます と 、 少し 明 度 が 落ち ます ので 、 どちら か いう と 黄色 か オレ ンジ の 明度 の 低い もの を 使っ たら いい と 思いま す 。 要するに ピンク が ほしい とき に は 黄色 ある い は オレンジ を 使う という こと です 。 切端 寄り の エナメル 色 に は 透明 ボーセレン だけ で は 使い ませ ん 。 どちら か と いう と 乳白色 になっ て い ます から 、 透明 ポーセレン と エナメル色 ポーセレン を 半分 ずつ 使い ます 。
GELLER そして 歯 頸部 に は HT52 番 の ネック トランス ルーセント を 築盛 し ます 。 この 歯牙 に は 切端 部 に かなり 白く 見える 部分 が あり ます 。 それ に は 表現 の 仕方 が いくつかあ り ます が 、 たとえば クラック ライナー を 使う と いう こと も ある し 、 白 の ステイン を エナメル 色 ポーセレン に 混ぜ て も いい と 思い ます 。
オペーシャス , デンティン を 使っ て 、 隣接 部 分 を 表現 し ます 。 この 場合 はOD 32 ぐらい だ と 思い ます 。
それから 切縁 部 の ハロー 効果 について は 、 象 牙 色 と エナメル 色 ボーセレン を 半分 ずつ 混ぜ た もの に 少し ビンク を 入れ た もの を 使います 。 い くつか の やり方 が あり ます から 、 その 中 から 選 択 し て ください 。
ともかくシェード , テイキング を 行ない 、 写 真 を 撮り , その 写真 と よく 見比べ て 、できる だ け 明 略 の コントラスト が わかる よう に し ます 。 この スライド だけ で は 明暗 の コントラスト が よ く 見え ない ので 、 かなり 難しい と 思い ます 。 た だ 基本 的 に は A 3 の 象牙 色 ポーセレン を 用い 、 白 帯 に は A 1 の 象牙 色 ボーセレン を 使い ます 。 切端 色 は あまり 半 透明 に し ない よう TM 2 で 青 味 が かっ た 感じ を 出し ます 。 そして 舌 側面 に は 透明 ポーセレン を 使わ ない よう に し て くださ い 。 舌 側面 に 多く 透明 ポーセレン を 使い ます と 、 グレー に 見え て しまい ます 。 ですから 唇 面 側 だ け に 使う という こと です 。
片岡 どうも ありがとう ござい まし た 。 もうひ とつ の 症例 は 、 非常 に 単調 な 色調 な の です が 、 これ も シェード , テイキング し て いただき たい と 思い ます 。 この 症例 2 の ケース の 色調 に関して は 、 キャ ラクター 的 な 色調 は ほとんど ない と 思い ます の で 、 切縁 の 青 味 未 がかっ た 強い 透明 感 を どう する か という こと に なる と 思い ます 。 では 今度 は 山 本 先生 から 、 よろしく お願い し ます 。
症例2
図7 症例2における山本氏のオペーク、およびマージン・ポーセレンの築盛。
図8a 同 山本氏の築盛。
図8b 同 山本氏の築盛。
山本 左 の 中切 歯 は カリエス の せい か 少し 暗い ので 、 右 の 中切 歯 で 見 て み ましょ う 。 これ は 、シェード ガイド と の 比較 で は 、 皆さん に も ほぼ A 1 に 見える か と 思い ます 。 そして それ より も かなり ビンク が かっ て い ます が 、 A 1 + ピンク だ と まず 合わ ない でしょ う 。 ですから この ケー ス で は 、 オペーク ポーセレン は A 1 O に ピン ク
( OMa ) を 10 % 程度 混ぜ た もの 使う と 思いま す 。 そして マージン 部 の 透明 感 が かなり 高い で すから 、 ポーセレン , マージン の 部分 は よく 注 意 し ます 。A : M と DLM を 1 : 1 程度 に 混ぜ た もの を 使い 、 その 上 に ピンク の ファン デー ショ ンステイン を する でしょ う 。 あまり 不透明 な もの を 使っ て しまう と 、 ここ は ちょっと 明るく
なり すぎる よう です ね 。
ボディ は A 1 B を ベース に し ます が 、 よく 見 て 比 色 する と A 1 の シェード ガイド が 少し グ レー と グリーン 味 が かっ て い ます 。 ですから 、 A 1 B に バリュー · プラス の VA 1 を 20 % 程度 入 れる でしょ う 。 そして それ に ピンク の モディ ファイヤー を 10 % 程 加え ます 。 ピンク を 加える と 明度 が 下がる ので 、 それ を 相殺 する ため に も バリュー プラス ( VA ) は 必要 です 。
そして この ケース で 最も 大きな ポイント と な るのは 、 切縁 の 色 だ と 思い ます 。 それと デンティ ンマメロン です 。 この スライド から で は 、 か なり 不規則 な 形 の デンティン , マメロン が あり ます 。 これ は 私 でし たら オパール · ミルキー と 、 イフェクト の 2 番 を 3 : 1 程度 で 混合 し た もの を 使い ます 。 それ を 薄い 層 で 象牙 色 ボーセレン の 切端 部 の 中 に 入れ て その 形 を 再現 し ます 。
この ブルー が かっ た 、 しかも 非 常 に 透 明 度 の 高い 色 は 、 従 来 の エナメル 色 や 透 明 ポーセレン で そのまま やっ て しまう と 、 口腔 内 で は ガラス の よう に 黒く 見え て しまい ます 。 この 色調 は エ ナメル 質 特 有 の オパール 効果 に 由来 する 色調 で す 。 ですから オパール · スーパー ルーセント の 単味 で いける の で は ない か と 思い ます 。 ちょっ と それでは 透 明 度 は きつい かも しれ ませ ん ね 。オパール , スーパー ルーセント に オパール 57 を 少し 混ぜる ぐらい の 感じ でしょ う ね 。
切縁 の ハロー 効果 は 、 何 も 必要 ない です ね 。これは 形態 から きている だけのもの ですが 舌側切縁 の 形に さえ 注意 すれば ここには 不透明 なものを 盛る 必要 はないと思います。そして、ハローが 少し オレンジ がかっていますが、これも オバール、ポーセレンの 逆 オバール 効果 によって 自動的 に 生じます。 ただ 隣接部分 については、オパール、オ ク ルーザル ぐらいの感じの 色 だ と思います。そして ボディ 中央部 もかなり 透明度 があります。深みがあるという感じです。ですから築盛の際には、この部分 の カットバックを 通常 よりも 少し 増やして 、オバール· スーバールーセント をかぶせたほうがいいように思います。そんなところでしょうか。
片岡 ありがとうございます。では青嶋先生お願いします。
青嶋 私はアプローチの仕方が Geller 先生とまったく逆で、どちらかというと明るいほうから暗くしていきます。内部ステインの場合は、明るいところから始まらなければ、ステインを塗るということ自体が、明度は低くなるし、それから彩度は上がる、要するに濃くなって暗くなる。それ以外のことはできないので、ステインで明るくすることは不可能だし、 色を薄くしていくことも不可能ですから、明るいどころから始まります。ですから、このときもA 1 のオペークボーセレン、それからA 1 の象牙色 エナメル色ポーセレンを使います。 そしてこの場合は、マージン、ボーセレンもおそらくA 1 を使うでしょう。シェードガイドと比色してみるとA 2 のほうが ずっと グリーンっぽく 見え、天然歯 のほうが ビンクなので、普通に A2 の象牙色ボーセレンを禁盛していたら、つくったものは必ずグリーンっぽくなってしまうと思います。ただノリタケ AAA の場合は、A 2 のマージンボーセレンはかなりビンクっぽいですから、A 2 も適用できるし、 もしA1 を使ったとしても、どちらからでもアプローチしていくこと ができると思います。
図9 症例2における青嶋氏の築盛。オペーク:A1O、マージンポーセレン:MA2、象牙色ポーセレン:A2B、エナメル色ポーセレン:E2。
青嶋 そして使うステインは、まず 薄く 塗 布していくと かなり ビ ンクっぽく 見えるサービカルの1.で、歯顎 部分は、 サービカルの 1 と 2 を 少量 混ぜたものを 使います。 よく見ると 歯顕部 1/3 の 部分 に 白帯 が見えますが、これは 色調 というよりも 形態 によるところも 多い のですけれども、要するにへこんだ ところは 暗く見える、 色が 濃く 見える ということです。それで 隆線 に 白帯、へこんだ 横溝 のところにごく 淡く サービカル 色 のステインを 塗布 していきます。それから この歯で 一番 特徴的 なのが、この デンティン マメロン の 部分 です。
この部分は 象牙色 とエナメル色 ポーセレン だけの 築盛で、 なるべく その形に 近いような 築盛を しますけれども、もしそれで 不十分 でしたら、ジスク を 使って 切り込み 入れて デンティン · マメロン の 形態 をシャープ に 仕上げます。 そして この 部分 は マメロン オレンジ の 2 という 色が ピッタリ だと 思います。
ここに ステイン を 塗布 しておきます。それから切端 に ハロー 効果 による 不透明 な 部分 が 見えます。ノリタケ AAA には オバール 効果 はありませんから、 これは 最終的 に 透明 ポーセレン を 築盛して、 切縁 を まったく 天然歯 と 同じ形 に 削っても、 そのような 不透明 な 効果 は 出ますけれども、 もっと 白っぽい 感じ になってし
ても、どちらからでもアプローチしていくことができると思います。そして使うステインは、まず薄く塗布していくとかなりビンクっぽく見えるサービカルの 1. で、歯顎部分は、 サービカルの1と2を少量混ぜたものを使います。 よく見ると歯顕部 1 / 3 の部分に白帯が見えますが、これは色調というよりも形態によるところも多いのですけれども、要するにへこんだところは暗く見える、 色が濃く見えるということです。それで 隆線 に 白帯、へこんだ 横溝 の ところにごく 淡く サービカル色 の ステイン を塗布 していきます。
それから この歯で 一番 特徴的 なのが、この デンティン マメロン の 部分 です。 この 部分は 象牙色と エナメル色 ポーセレンだけの 築盛で、 なるべく その形に 近いような 築盛を しますけれども、もし それで 不十分 でしたら、ジスクを 使って 切り込み 入れて デンティン · マメロンの 形態を シャープに 仕上げます。 そして この部分は マメロン オレンジ の 2 という色が ピッタリだと思います。ここに ステインを 塗布して おきます。それから 切端に ハロー効果に よる 不透明な 部分が 見えます。ノリタケ AAA には オバール効果は ありませんから、 これは 最終的に 透明 ポーセレン を 築盛して、 切縁 を まったく 天然歯と 同じ形に削っても、 そのような 不透明な 効果は 出ますけれども、 もっと 白っぽい 感じに なってしまい ます 。 ですから 、 切縁 に は 象牙 色 、 エナメル 色 ポーセレン に マメロン , オレンジ 1 を 少し混ぜ た もの を 築盛 し ます 。
隣接 面 に は オレンジ を さらに もう少し 多く し た もの を 築盛 し た ほう が いい でしょ う 。 それから 切端 および 切端 隅 角 部 に は 、 透明 感 の 強い 透明 ボーセレン を 築盛 し て いき ます 。あと 切端 寄り 1/3 の 部分 に 淡い チリメン 状 の白斑 も あり ます が 、 これ は 内部 ステイン で 軽くつけ て やっ て も いい でしょ う 。
大体 そんな ところ です 。 とにかく 私 の 内部 ス テイン テクニック です と 、 ちょうど 絵 を かくよう に 無地 の キャンパス に 絵具 を 使っ て どんどん 色 を つけ て いく よう に 、 なるべく 白い もの から 始まっ て 、 だんだん 色 を つけ て いく という 形 を とり ます 。
片岡 どうも ありがとう ござい まし た 。 それで は Geller 先生 よろしく お願い し たい の です が 。
GELLER 私 は もともと 直感 的 に もの を 見る 人間 な もの です から 、 いろいろ と 方法 を 検討 する という こと より も 、 むしろ じかに 見るというふうにし ます 。 たとえば 、 3 週間 くらい 前 ある 歯科 医師 と 一緒 に 仕事 を し まし た が 、 その 歯科 医師 は 、 私 の 色調 の 捉え方 に 驚い て い まし た 。すなわち 目 で 見える 色 を そのまま 表現 し て いくことに 驚い て い まし た 。
ストレート に 見 て 、 全体 的 に は A2 という こと で 考え ます 。 クリエーション を 使う 場合 は 明 度 を 落とし ませ ん 。 また 歯題 部 において は 明度 を 下げ ます 。 とくに 若い 人 です と 、 歯 顕 部 が ビ ンク 色 に なっ て い ます ので 考慮 に 入れ ます 。 で すから マージン · ポーセレン によって 、 歯題 部 を コントロール しよ う と し ます 。 オーバー ラッ プ を スムーズ に し 、 それ によって 適切 な 色調 を与える よう に し ます 。
さて この 場合 注意しなけれ ば いけ ない の は 。口蓋 側 にあまり オ ペーシャス デン ティン を 使わ ない という こと です 。 高い ところ で 、 大体 切 端 寄り 2/3 まで でしょ う か 。 象牙 色 ボーセレンは 小さな 積層 形態 に なり ます 。 そして 厚み をあまり もたせ ませ ん 。
メイクインを薄く塗布し、 それによって光の拡散を起こします。そして、いろいろなちがった色調のエナメル色ボーセレンを築盛しましょう。切緑は少し不透明なものに変えます。また、オペーシャスデンティンあるいは象牙色ボーセレンによる舌側面からのサポートはしません。つまり通常の切端部ということになります。またネックトラスルーセントも通常にします。新しい HT-53を使うというのがよいと思います。そしてこのケースは切端が非常に透明です。したがって、舌側面の象牙色ボーセレンをカットします。しかもかなり大きくカットします。そうしないと光が透過しないからです。そしてその部分へ象牙色ボーセレンとエナメル色ボーセレンを50%ずつ混ぜたものを築盛します。 また場合によっては、少しだけ透明ボーセレンをカラー·トランスルーセントとして、 黄あるいはオレンジ色を入れ、それを舌側切端部の内部に入れるかと思います。
色としては難しくありません。 難しいのは、1つの方向からそこに到達ずるということです。ですから運にもよります。もちろん運が作用するのはどのケースもそうですが。どうもありがとうございました。
片岡 ありがとうございました。
それでは時間 がそろそろまいりましたが、 会場 からの 質問 がありますので、 先生方 に お答え いただきたいと 思います。
佐古(大阪·開業医) 審美 ということを 非常 に 真剣 に 取り組んで おられる 技エ士 の 先生方 が お 3 方 おられますので、 お伺い します。
審美的 な 歯科 治療、 補綴 処置 を行なう 場合、機能的 な 面 で 歯科 医師 と 歯科技工士 との 間で、優 先 する 点が 多少 異なる 場合、どのように 接点 を 見出 せば いいのか、 ということを お聞きしたいと 思います。
どのようなことを 中心に、 機能的 にも 異常 がないけれども、審美 も ここまでは 譲れる という ポイント は どこか ということ です。 たとえば 切端は 譲れないとか…。 先ほど Geller 先生 の 話に よく 出てきたのは、 歯頭 側 のショルダーの 削除量、 プレパレーション の 量 はこれほどはほしいとか…。たとえば 山本先生 は どういうところ までは してもらわないと 作れない、 それが 支台歯 の 形態 なのか、あるいは 削除 の 量なのかということです。
山本 先生 は オクルージョン をかなり やっておられる ということ ですけれども、もちろん 審美歯科 は オクルージョン だけではなくて、ペリオ や エンド も 含めて すべての 分野 がからんできます。先生は、審美 を 追求 しておられるというふうにおっしゃいましたが、私 は やはり 補綴物 というのは 必ず機能 を 満足 させたうえでないと 審美 は 語れないというふうに思っていますから、そういう意味で言わせていただきます。現在は、ポーセレン材料もかなりいろいろな優秀な製品が出てきていますが、金属焼付ボーセレンに限定しますと、 やはり現状でもショルダー幅は1mm以上は必要です。
そして先ほど Geller 氏が出していたケースのように、舌側面 まで ポーセレン を 焼き付ける ということで あれば まったく 話 が 別 になるのですが、メタルだけでいく、つまり ベニヤ タイプということになれば、舌側面 の 削除というのは少なくとも 0.8mm は 確保してほしいと思います。これは ミニマム だと 思います。 あと 切縁 の 長さは ケース に よっても ちがうのですが、 今 ここに 出ていました ああいう ふうな 切縁 の 透明感 と 色調 を 出そうと 思えば、まず たぶん 切縁 は 3.0mm ぐらいは 削らないと 無理 だと 思いますね。 あれで 切緑 の クリアランス が 1.5mm ぐらいしかなかったら、まずほぼ 不可能 に 近いと思います。
その辺の回答でいいでしょうか。
佐古 耳慣れた 数字 が 出てきて 安心 したのです けれども、ただいま 聞いていて ふと 思い出しましたが、スーバー ストラクチャー と、 それから アバットメント、 根と、この 3者が やはり 合体 であるが ゆえに 成り立つ 話 をも あるわけで、ちょっと 簡単 に すませられる 問題 ではないと 思います。そういう 意味 から、 たとえば 先生 の 場合、機能 が 優先 されて 審美 があるというふうなコンセプトで、こちらの 歯科 医師側 も日常 臨床 を こなして いいと、 考えさせていただいてもいいのでしたから、 非常に今日は来てよかったです。
山本 私 は 絶対 そうだと 思います。 そういった 観点 で、折り合い の つくところで 互いに 譲り あわなければ ならない のでは ないでしょうか。
片岡 どうも ありがとう ございました。これで、今回 の Geller 先生 を お迎え しての 大阪 セラミック トレーニング センター の セミナー を終わらせて いただきます。
片岡繁夫氏の所持しているWilli Geller氏のサインの入った写真。
セラミック技法を確立した4人の巨匠セラミスト。
左から、片岡 繁夫氏、山本 眞氏、Willi Geller 氏、青嶋 仁氏。
日本の審美歯科の転換期を象徴する有名な写真。この写真から、4人がお互いに尊重していることが感じ取れる写真です。日本の歯科技工士達はWilli Geller氏には個々では対面はしていても、このメンバーが揃って出会う事は初めての機会でしたので、WIlli Geller氏も含めての彼らは、この講演会を待ちに待った瞬間だったことだったろうと思います。当時の日本の歯科技工界はあまり意識はしていなかったと思いますが、今から日本の審美歯科の歴史をふりかえりますとこの講演をきっかけに、Willi Geller氏 によって日本の審美歯科に対する意識が、ワンステップ ステージが上がったように思います。
私は、この時の講演会には参加していませんので、この時の彼等の心境、状況は想像するしかありませんが、このときの4人の絆は、4人だけが感じた特別な絆はなんらかのかたちで後の日本の歯科技工界に刺激を与え、若手を牽引し、日本の歯科技工の未来を形成して行きます。そのことを踏まえますと、この4人の絆、尊重がいかに特別な事、感動的な事だったかと想像する事ができると思います。この鼎談をきっかけにこのメンバーが集結する機会が何度か日本で訪れますが、彼等はこのときの時間を思い出し、意識して楽しんでいる事が見て取れます。そしてこの特別な絆は今でも続いています。その事も踏まえてこの論文を読んでいただければ、なおこの講演会の雰囲気が伝わるかと思います。
(Yasuhiro Odanaka)
片岡繁夫氏は、「ZERO:2010. Vol.9 No.4 秋号」にて、この時の思い出と片岡氏の思いを語っています。
EDITORIAL BOARD
歯科補綴物の材料は、メタルセラミックスからオールセラミック材料であるアルミナをはじめ、ニケイ酸リチウム系ガラスセラミックスなどのプレスシステムへと変化を遂げ、歯科用CAD/CAMの開発と共に、今度はジルコニアが導入され、さらにコバルトクロムのCAD/CAMメタルコーピングへと進化をなしている。
それらはすべてセラミック補綴物の一部分であるコーピング作製であり、最終補綴物の色彩再現においては、いまだ歯科技工士の手腕に委ねられている。
セラミックスにおける色彩表現技法 (築盛技術)の基礎は、Will Geller氏の「多色盛り技法」、山本 賞氏の「カットバック技法」(『ザ·メタルセラミックス』[クインテッセンス出版。1982))、青嶋 仁氏の「インターナルライブステイン技法」(医歯薬出版「歯科技工」15周年記念講演会,1989)に代表され、三氏によってほぼ20~30年前に確立された技法である。
年代を前後して、さまざまな人達が何らかの形でらしき技法”を発表されているが、私の知る限り、この三人の歯科技工エ士は、セラミック技工においてはパイオニアであり、今なお現役でその技術を発信し続ける、歯科技工士にセラミストなる称号がつけられた最初の歯科技工士達であることは間違いない。
なお、桑田正博先生においては、日本にメタルセラミックスの材料、技術を最初に発表された先生であり、メタルセラミックスのパイオニアであることは誰もが認めるところである。
写真は1991年、神戸でのカットである。
今日のセラミック技法の基礎を作り上げた三人の巨匠セラミストが、この秋、横浜で同じ舞台に立ち、 講演を行う。今なお衰えをみせないその技術、 知識を見聞きできることは、今世紀最大で最後であろうことであると共に、若い歯科技工士には、そのオーラを感じられる、 最高の機会ではなかろうか。
今、セラミックスをうまく作ることのできる若い歯科技工士はたくさんおり、素晴らしいことであり頼もしい限りであるが、 審美補級で重要な色彩表現においてのすべては、この三人の巨匠セラミストから始まっていることを、この機会にぜひ知ってほしい。
ZERO publishing
片岡繁夫